幾つもの黒い光はどんどん溢れ、ユノの身体から抜け出ていく。
……そしてそれらは全て…。
……イーオの手に、吸い込まれていった。
紙面に垂らした墨の様に、じわりじわりと…染み込んでいく。
不可思議な、光景。
その様子を目の当たりにする一同は、ただ目を丸くするばかり。
黒光りする幾つもの粒がイーオの手に吸い込まれていく様はまるで、イーオが汚れを代わりに抱えようとしている様にも見えた。
…溢れ出ていた黒い光。次第にその数は衰え、二、三粒にまで減ったかと思うと…。
………ぱたりと、ユノの身体からは何も出てこなくなった。
同時に、イーオは乗せていた手をそっと離し、ユノの頬を優しく撫でる。
…心なしか、ユノの顔色は幾分良くなったように見える。真っ青だった肌は次第に血の気を帯び、紫の唇は赤みをさしていった。
…誰が見ても、ユノの容態は良くなったと分かるほどの回復振りだった。…しかし相変わらずその瞼は閉じたままで、起きる気配など無い。
傍らで手を摩りながら息を吐くイーオは、微笑をレトに向けた。
「………とりあえず、これで大丈夫よ。だけど、この子の意識がいつ戻るかはまだ分からないわ。……私は、押さえ付けていた厄介な魔石の力を抜いただけ。………後は、この子自身の力が頼りね………力が戻ってくれればいいのだけど」
…ユノ自身の回復力だけが頼り。…王族である彼の力は元々強力であるから、回復は早いだろう。
…しばらくはこのまま…安静に、ということだった。
「………大丈夫…なのですか…?………その…貴女自身は…」
…先程の術の様を見る限り、有害な力を全て吸い取ったイーオに何かしらの影響があるように思える。
そう危惧するリストに対し、イーオは首を左右に振った。
「…私は大丈夫。…吸い取ったものは私の中にありつづけるけれど、器の私には何の影響も無いのよ」


