…巻き込んだら大変な事になってしまうわよ、と意地悪く呟くイーオから、二人はゆっくりと距離を取った。
レトは無言のまま、じっとその様子を見守る。
そんなレトの不安に満ちた眼差しに応える様に、イーオは微笑みを向けた。
「……大丈夫よ」
か細い老いた手が、横たわるユノに翳された。
撫でるように、見えない空間をゆっくりと漂うイーオの手。
結った白髪の下の細められた両目は、他人が見ているものとは違うものを見ているようで、忙しなく泳ぎだす。
「………この子に…気味の悪い力が絡み付いているわ。…この子自身の力を、押さえ付けている。……………魔石の力、ね…レト君、ここに来るまでの道程は、だいぶ忙しかったようね…」
魔石の力、と聞いて、リストは顔をしかめた。
沈鬱な表情のまま黙りこくるレトを鋭い視線で見下ろす。
「………後でじっくり話を聞かせてもらおうか。……レトバルディア、だっけ?」
「えー?…レトパンドーラじゃなかったっけ?」
「……………………………レトでいい…」
事情説明をするようにと言うリストと、素で名前を間違えているイブに、レトはポツリと呟いた。
「……少し、静かにね…」
そう言うと、イーオはユノの胸元に手の平をそっと乗せた。
すっかり冷たくなっているユノの身体は、元から体温の低いイーオの熱を奪っていく。
イーオは目を閉じ…静かに、息を吸った。
「………さぁ、おいで。………………いい子ね…」
フワリ、と。
イーオの手を中心に、ユノの身体から………真っ黒な光の粒が、溢れ出した。
真っ黒な、小さく瞬く光。
それは小さな身体から抜け出し、綿雪の様にフワリと宙を舞う。


