イーオはレトの頭を撫でながら、小さな声でポツリポツリと言葉を紡いだ。
「………あの青い髪の坊やは、貴方にとって…とても大切な人なのねぇ。友達想いのいい子。……心配しないで、大丈夫。………痛いことなんてしないわ」
「………」
「……本の少しだけ、ね。…坊やを元気にするお手伝いをさせてちょうだい。………良いかしら、レト君」
「………」
口で答える代わりに、レトは小さく頷いた。
その顔はまだ不安げな表情を浮かばせていたが、なんとか了承を得たイーオは再度、横たわるユノに向き直った。
「…まだこんなに小さいのに…可哀相ね。………この子…王子様なんでしょう?」
…唐突なイーオの重大発言に、周囲は目を丸くした。イブだけが、呑気に首を傾げる。
「………れ?…そうなの?」
「お前、少しは疑えよ!」
ユノをただの拾った少年としか思っていなかったらしいイブに、リストは呆れたと言わんばかりに溜め息を吐いた。
…レトは震える瞳で微笑むイーオを見詰める。
「……どうし、て…」
どうして分かったの、という問いの全てを言い終える前に、イーオは笑顔で答えた。
「…あら。だってこの子…」
―――…イーオ、僕とノアと一緒にかくれんぼをしようよ。
―――…じゃあ、ノアが鬼ね。魔術でズルしたら駄目だからね。
―――…ほら、イーオ、早く。ノアが数え終えてしまうよ。
―――…急かさないでよ。待って。待って、王子。
待って、王子様。
「―――…私がお仕えしていた陛下や、その王子様と………本当に、そっくりなんですもの。……特に、やんちゃだった御祖父様と瓜二つだわ…」


