亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~





「………我が国に下された神の罰は……………ようやく、解かれました。…………たくさんの命が、犠牲になりました。………過ちは、繰り返してはならない………そのために……自国だけでなく、この世界自体を変えなければなりません。……………まずは、三つの大国全てに、王が必要です」

……端から聞けば、それは夢物語を語っている様にしか聞こえないかもしれない。しかし、熱を込めて真剣に説くローアンの姿は、民を、国を思い…世界へと目を向ける上に立つ者の姿だった。
…ただ単に玉座に座って国を見下ろす王ではない。

目線は前。

玉座を離れ、塀の向こうの地平線へと歩む………稀に無い類いの王者だ。




「………ふむ。………壮大な計画ですねぇ。………創造神アレスの理想世界に近付けるにはまず、形から……ですか」



反論しようとした老王を再び押さえ、面白そうに何やら考えるケインツェル。


「………その第一歩が、国交…。………………………………故に、バリアン王よ。……………………………………デイファレトの束縛を解き………王政復古を前提とした、行方不明の王族の捜索を…………………………御許し願いたい」


















デイファレトから手を引く事。


それはつまり…………………歴代の偉大なる王の功績を…………………無にする事。


戦争大国の名が、消える事を意味する。












そんな事が………!




















「―――いい加減にせよ!!………貴様の様な小娘一人の勝手な言葉で………このバリアンの歴史を…………っ………消されてなるものか!!」


老王は激しく地団駄を踏んだ。