「―――私は…他国の領土など興味が御座いません。自国が平和であれば充分。…………………私の、求める真意とは即ち………」
吹き抜けの窓から入り込んでくる熱風が、ローアンの髪を撫でた。少し乱れた黄金の髪の間から、強い意志を秘めた瞳が覗いていた。
「―――………崩れた世界の均衡を、正す事に御座います」
「………世界の均衡……?」
頬杖を突いたまま、アイラはポツリと復唱した。
「………長い歴史の中………三つの大国の秩序によって、創造神アレスの世界は保たれてきました。…………………しかし…相次ぐ戦争や内紛……………人の、汚れきった業により………今や………それも崩れ去ろうとしております…」
下らん、と老王はそっぽを向き、鼻で笑った。
「………崩れる?だからどうしたと言うのじゃ……神の望み通りに国を治めるなどと…………人間がいてこそのこの世界ではないか……!」
「………ですが、その神に背いた報いとして……………この砂漠の国…バリアンがあるのでしょう……?」
「………」
…事実を突き付けられ、ムッとした老王は何か言おうと口を開いたが………何も言葉は出なかった。
「………神から罰が下されるという事は、均衡が崩れている証拠。………………そしてその罰は………デイファレトにも、フェンネルにも………下された…………………………………確実に…世の中が………おかしくなっている…」
―――バリアンには砂漠化が。
―――デイファレトには凍て付く不変の大地と病が。
…………フェンネルには……悍ましい呪いが。


