亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~












リストのフェーラ特有の破壊魔術により、雪崩は回避出来た。

案の定、衝撃の反動で全員が吹っ飛んだが。


半ば運命に身を任せ、真っ暗な崖の下へと真っ逆さまに落ちていく。辿り着く場所は一体何処やら。

まず、ちゃんと着地出来るのだろうか。厚い積雪ならば大丈夫だが、岩が露出した固い地面ならばそれなりの怪我は覚悟せねばならない。

…手足が骨折しても自力で治せるが……痛いものは痛いのだ。無傷に越したことは無い。


重力に従って落下していく最中、二人は子供をしっかりと抱え、受け身の体勢を取りはじめる。

地面が近い、と感じた時、ぼんやりとだが目下に地面らしき景色が見えてきた。
暗闇の中で浮かび上がるその光景は……何処もかしこも真っ白に映えていて…幸いにも、厚い雪で覆われていた。
これで着地時の怪我の心配は無い。


二人は受け身の体勢でそのまま、勢いよく積雪に突っ込んだ。
地面と僅かに接触した直後、前転して衝撃を分散させる。
その場ですぐに立ち上がり、マントの雪を軽く払った。


「……無事か?」

「…なんとかね。………あ、そういえば鳥、潰れてないかな…」

子供ばかりに気をとられていたため、あの黒い雛鳥の事などまるで頭に無かった。
…飛んだり跳ねたり回ったりと散々動いたが…懐に押し込んだ鳥の安否は果たして…。

恐る恐るマントを翻して内を覗いて見れば。
………いない。…いない?

姿形が何処にも無い、と慌ててマントの至る所に目をやるイブだったが。





「チーチチッチ、チーチーチー」

「おい、足元にいるぞ」


…一体いつ、何処からどんな方法で足元に移動したのか。何故、そんなに元気なのか。

何食わぬ顔で陽気に歌う雛鳥を、呆れ顔を浮かべたリストが指差していた。