「―――………ん…」
何の前触れも無く二人の間に漏れた小さな声は、明らかに第三者のものだった。
声変わりをしていない少年のくぐもったその声に、二人の騒がしい口論ははたと止んだ。
イブは目を丸くし、リストに到っては一筋の冷や汗を流しながら……現在進行形でイブが脇に抱えている声の主に、揃って目をやった。
…マントに包まれたその小さな身体は僅かだが、ピクリと動いた。
意識が戻ったのか否か。グルグルに巻いたマフラーから覗くやけに端整な顔を見れば、瞼は閉じられているものの、口元が小さく動いている。
……覚醒、しそうだ。
「………おっ。…もしかしたらお目覚めじゃん?なんか起きそうだよこの子」
この際、起こしてしまおうか…と楽観的に考えながら少年の青銀髪を軽く叩こうとしたイブに…顔面蒼白のリストがストップをかけた。
その形相は、絶体絶命の窮地に追いやられた人間と般若の怖面を足して二で割った様な、とにかくなんとも形容し難いものだった。
「止めっ…止めろ!!起こすな馬鹿!考えてもみろ……そのガキから見れば、俺達は誘拐犯や人身売買の商人だとかの類にしか見えないだろ!もしくはただの変人だ。どちらにせよ、悪者としかとられない。……加えてそのガキは狩人だ………何をしてくるか分かったもんじゃない…」
例として上げるならば、以前の神声塔で仕掛けられた残忍な罠の件だとか。
…とにかく、狩人というのは自分達とは何処か違う神経を持ち合わせていると言うか…戦闘において加減を知らないと言うか…慈悲なんてさらさら無いと言うか………………こちらの想定外の行動に出る、読めない人種だ。


