「……っ………!王族の……!?…………………そんな事をしてどうなる!!貴様らはこのバリアンの力を削ぐつもりか!!国交などと言いおって………やはり我が国を陥れる策か!!………おのれっ…」
完全に頭に血が上った老王は、周囲の兵士に指示を出そうと腕を上げた。
…しかし、その骨と皮だけの老いた腕を、ケインツェルが瞬時に押さえた。
「………な、何じゃ!!………ケインツェル………この手を退けよ!!」
振り払おうとしても、ケインツェルの白い手は一向に離れる気配は無く、本人は嫌けがさすいつもの笑顔で見下ろしてきた。
「―――………王よ、カッとなられてはいけませんねぇ。癇癪持ちはぽっくりと逝ってしまいますよ。………話は最後まで…聞きましょうか」
ケインツェルは老王の腕を押さえたままやんわりと言い、その切れ長の怪しい目をローアンに向けた。
にんまりとした笑みからは何も言葉は無かったが………続きをどうぞ、と促しているように見える。
―――するとその時、じっとこちらを凝視したまま黙っていたリイザが、少年という歳には似つかわしくない無愛想な表情で口を開いた。
「―――……その、真意は………何かな……?………………女王陛下…」
言葉の表より裏しか興味が無い様な、探る様な眼光。
……全てを的確に捉える鋭いあの瞳は、本当に子供なのだろうか。
ローアンは眉をひそめた。
(―――……良い目だ。………………………………しかし…………………………)
ローアンは憤慨する老王に向き直り、再度口を開いた。


