亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~

先程のサラマンダーは偵察をしていたのだろう。飼い主の…恐らくバリアン兵士は、こちらの存在に気付いたに違いない。

谷を越えれば敵と遭遇する確率は高いだろうとは予想していたが、奴らが勝手に作った縄張りは案外広いようだ。
そして伝達も速い。

…こちらは今、容態の芳しくない子供二人を抱えている。
巻き込む訳にはいかない。…それよりも早く、医者のいる街に行かなければ。

(……街まではもう、あとすぐの筈だ…)


………もしかしたらその街がバリアン兵士等に占拠されているかもしれない。それでは敵の手中に飛び込むも同然だが……ここは子供が優先。生死に関わるならば、背に腹は変えられない。





距離はまだあるが…このまま走れば…。







………撒ける、か?




















リストはマントを脱ぎ、青い髪の少年を隠す様にしっかりと包み込んだ。 そして脇に抱え直し、街がある方角へと目を向けた。

「…全速力で走るぞ。方角はこのまま北々西。…何が何でも逃げる…そのガキを落とすな!」

「あの鳥持って行っていい?」

「置いていきなさい!」

久しぶりのお肉なのに!、というイブの悲痛な叫びを聞き流し、リストは走り出した。一刻を争う…という状況を分かっているイブだが、それでもやや名残惜しそうに振り返りながら後に続いた。


あの巨大な谷を越えてから、視界に広がる欝そうと茂っていた森の規模が小さくなった様に思えた。
代わりに目に付くようになったのが、純白の針山の群れ。
鍾乳洞で見る数メートルの歪な円錐型の岩が、並ぶ針葉樹の影から覗いていた。
木々よりも、針山の割合が高くなってきている。おかげでこの一帯の森はどちらかといえば少しだけ明るいのだが、日が暮れる直前の今は何処も同じで、やはり暗かった。