亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~


灼熱がなんだ。
炎がなんだ。

こちとら、火山の溶岩の隣で生まれているのだ。
砂漠の熱気なんて目じゃない。



「飛べるからって、有利って訳じゃないんだぞっ…と!」

巨大な火柱が目と鼻の先に迫り来るまで微動だにせず堪えた直後。
素早く身を捻り、紙一重で火柱を避けた。
靡くポニーテールの毛先が本の少しだけ熱を浴び、チリッ…と身を焦がした。


イブは一瞬だけ眉をひそめたが、避けるや否やその場から前へと地を蹴った。

炎の塊が、すぐ隣りを通り過ぎていく。
そのままサラマンダーが待ち構えているであろう前方へと歩を進めながら、イブは鋭利な爪が光る右手を構えた。

下から上へ振られた爪は……足元に転がる木々の残骸や雪の塊、大小様々の岩を、地面から掘り起こす勢いで打ち上げた。

………前方から突如、こちらに向かって吹っ飛んできた瓦礫の山。
容易に避けることは出来ないそれに、サラマンダーは反射的に真上へと上昇した。


何も無い安全な上空で羽ばたきながら、怪鳥の鋭い目は地上の敵の姿を捜し回る。
ちらつく吹雪と瓦礫、そして自身の放った火柱によって発生した蒸気に塗れた視界からは、なかなか敵の存在を見出だすことは出来なかった。

何処にいるのか判断がつかない中、とにかく再び地上に向けて火柱を吐こうとサラマンダーは構えた。






…その途端。



























「―――…何処見てるのかなー?」


















やけに上機嫌な声が、羽毛に隠れた耳に響き渡った。



声は、頭上から。


何も無い筈の更に上空からだった。














太く長い首を捻って声の方に向こうとした直前。









緩やかな曲線を描く燃える真っ赤な怪鳥の背に、強烈な衝撃とそれに伴う痛みが叩きつけられた。