「チチッチチチー」
「こぉーら!大人しく引っ込んでなさーい!」
脇に抱えた狩人の少年のフードの内から、黒い雛鳥が顔を覗かせた。
このやけに人懐っこい鳥は、最初から少年二人と一緒にいたようだった。 あの凄まじい雪崩にあいながらも、何故かこの鳥だけはこのとおりピンピンしている。
おまけに音痴な歌など急に歌いだすものだから、うるさくてかなわない。
また歌いだそうと嘴を開けた雛鳥を、イブはマントの内に押し込んだ。
その直後、コキッ…と何か細いものが折れるようなそんな音が聞こえてきたが、あえて無視した。
…サラマンダーの追跡は、途切れない。
さっきからわざと生い茂る木々の影に飛び込みながら、奴の視界から少しでも外れようとしているのだが、あの円らな瞳は何処までも追ってくる。
この怪鳥の飼い主であるバリアン兵士等が何処に潜んでいるのか知らないが、とにかくこの追跡から逃れるのが先決だ。真っ赤な鳥に喚かれながら追われている時点で、隠れようにももう目立っているのだから。
(…日も暮れることだし…)
夜という時間は、“闇溶け”が使えるこちらとしては攻守が優る素晴らしきゴールデンタイムなのだが、今は生憎、人間二人という荷物を背負っている。
生き物を消すのは、武器を消すのとは訳が違う。
…ダリルやジン程の力の持ち主ならば可能かもしれないが。
…つまり、普段なら安心して移動出来る真っ暗闇なのだが、“闇溶け”が使えない今回は油断は禁物。敵に見付かる危険もあれば襲撃も考えられる。
………特に、狩人にはもう二度と見付かりたくない。
狩人の少年を抱えている自分達は、まるで誘拐でもしているようではないか…。
(…ああもうっ……うっざ~い…!)


