正確に言えば、匂いとは身体から満ち溢れる魔力の気配。
この少年から漂う魔力は独特で、ローアンの魔力…あの、王族にしか使えない白の魔力とよく似ている。
…この容姿や、この魔力………まさかとは思うが。
(………渦中の王族の少年じゃないか…?)
しかし捜索していた王族は親子の筈。だとすればこの少年と共にいるのは母親である筈なのだが…何故か一緒に拾ったのは、ほぼ同年齢の幼い少年であった。
もう一人のこの少年は、肩まであるウェーブのかかった青銀髪に色白の、これまた人形の様に綺麗な顔立ちの子供だった。
それだけではない。
その少年が、記憶を辿っても嫌な思い出しかないあの狩人であると、目にした途端その姿から理解した。
真っ白なマントと身体の到る所に装備した物騒な刃物の多くが、彼の正体が何であるかを物語っていた。
その幼い狩人も、青い髪の少年同様に今は意識が無く、瞼は固く閉じられている。昼間の嵐に遭遇し、あの巨大な雪崩にのまれたところで気絶したのだろう。………青い髪の少年を守るかの様に、彼はしっかりと少年を腕に抱いていた。
その狩人の少年は今現在、イブに抱えられている。
“闇溶け”で移動しようにも、イブ一人の力では人間三人を同時に“闇入り”で消すのは無理だ。
他に策は無いため、各自一人を抱えての地道な移動を選ばざる得なかった。
……青い髪の少年がはたして王族なのかどうかは分からないが…今はそれどころではない。少年はいつ息を止めてもおかしくない、瀕死の状態なのだ。
…先を…急がねばならない。
幸いにも、イブとリストの行き先は昔城に仕えていたという医者のいる街である。
情報入手と人助けを目的に、二人は幼い子供を抱え直して走る速度を上げた。


