亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~






「―――…率直に、申します」


ローアンは老王の怯えた目を見据え、それまで浮かべていた笑みを引っ込めた。


……綺麗なスカイブルーの瞳が、鋭さを増した。

老王は静かに、息をのんだ。
彼女の形の良い、赤い唇の隙間から………甲高いのに重みのある、凛とした言葉が、綴られた。

























「―――………北の大陸…第一大国デイファレトの…………………………王政復古を、望みます」
























「―――………何…?」
















老王は驚きのあまり………杖を落とした。




………我が耳を疑った。


この小娘は、今………何と言った?
何とほざいた?


………………我が国の占領地である北国………デイファレトの…………。













「―――………王政…復古……………じゃと…っ!!」


優れなかった老王の顔色は荒い鼻息と共にあっという間に紅潮し、数本の細い血管が眉間やこめかみに浮かび上がった。

………怯えから震えていた筈の唇は、今や沸き起こる怒りからの震えに変わっている。


「…………我が領土……………この大国バリアンの…………偉大なる先祖が勝ち取った…………我が領土であるぞ!!………それを貴様は……!!」

「おっしゃる通り。このバリアンの物である事は充分承知しております。………それを踏まえた話………。…………その王政復古を叶えるため…。……私の提案とは……………………デイファレトの、長きに渡って行方が分からぬままの、王族の捜索に御座います…」

ローアンは臆する事無く、淡々と述べた。