…なんて、思い出と言っていいのか分からないがとにかく昔の思い出に浸る二人だったが、追って来るサラマンダー殿はぬくぬくと浸らせてくれるつもりは無いようだ。
奇声を上げると同時に、開いた真っ赤な口の奥から、これまた真っ赤な火柱が二人目掛けて放たれた。
雪中の中で、その赤はやけに映えて見えた。
赤く色付いた熱の塊が一気に距離を縮めてくる。この極寒の雪国で熱気ほど有り難いものは無いが、それとこれとは別だ。
長いポニーテールを翻し、イブは反射的に脇へ飛びのいた。
巨大な火柱が真横を通過していくのを横目に、枝から枝へと跳び移る。
…昼間の嵐によってガチガチに凍り付いた木々の群れは、枝の先から根っこに到るまで何処もかしこも滑りやすくなっている。
イブが飛び乗った太い枝もその例外ではなく、ずり落ちそうになったがそこは獣の驚異的なバランス感覚で堪えた。
………その瞬間、脇に抱えている大きめの荷物をうっかり落としそうになり、イブは慌てて抱き直した。
それを見兼ねたリストが、少し離れた場所から罵声を飛ばす。
「馬鹿野郎!!落とすなこの馬鹿!!」
「うるっさーい!!馬鹿って二回も言うな!馬鹿馬鹿馬鹿!!」
「阿保かお前!言えばいいってものじゃねぇぞ!」
ギャーギャー喚く二人に向かって、火柱は問答無用で襲いかかってくる。第一こんなに騒いでいては撒こうにも撒けない。
ぐっと地面を踏み込んで倒れた木々の上を飛び越え、揃って着地した二人は再び並んで走り出す。
………非常に下らない口論を飽きもせず続けながら必死で逃げる二人は、マントの内の脇に、とある『荷物』を各自抱えていた。
昼間まではこんな荷物など持ってはいなかったし、持つ予定も無かったのだが………どんな因果なのか、ひょんな事からこうやって抱えていかなければならなくなった。
捨てれるものなら今ここで捨ててしまいたいが……そういう訳にもいかない。
…物が物だけに。


