息を殺してコソコソ隠れながら移動しなければならない日々は、体力気力と共に神経をも擦り減らす。
そして歩きやすくなった筈の穏やかな雪景色は、メリットが出た分、身を潜めにくくなったというデメリットも伴う。
……静か過ぎる。雪を踏み締める足音が、やけに大きく聞こえるのは気のせいだろうか。
幸い、日暮れはもうすぐだ。暗くなれば闇がこの身を隠してくれる。
それまでに極寒の一夜を過ごせる安全な場所を見付けなければならない。
だがしかし。
そう事が上手く進まないのが世の中である。
……本来ならば忍び足で進まなければならないのだが。
そんな事知ったことではない、と言わんばかりに、猛ダッシュで地を蹴る二人。
昼間の嵐で倒れたらしい巨木の上を、タイミングよく揃って飛び越えた。
……そのすぐ背後を、真っ赤な鳥が二人を追撃するべく、燃える翼を羽ばたかせてていた。
火を吹く鳥……某国の砂漠にしか棲息しない筈のサラマンダーが、奇声を上げながらしつこくついて来る。
時折その嘴から吐き出される火の玉を、二人は紙一重で避け続けた。
…騒ぐ事なく冷静に、無言で逃げる二人だが………リストは、ただでさえしわが寄っている眉間に更にしわを刻み、加えてこめかみには青筋まで浮かばせていた。
背後のサラマンダーを、ちらりとも見ようとしない。
「―――…うぜぇ。本っ当にうぜぇ………………三枚か四枚に下ろしてやろうか……綺麗に…」
隣で勝手に黒いオーラを放ち、勝手にキレかかっているリストを横目に見ながら、イブは呆れたと言わんばかりに肩を竦める。


