亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~













―――…デイファレトの最も危険な天災である嵐は、一度爆発すればそれはもう凄まじい威力を放ち、全てを一掃してしまうが。


溜め込んでいた力を解放した後は、あの爆発は何だったのだろう…と呆れてしまう程、天地は嘘の様に静かになる。
ほとんど真横に吹き付けていた吹雪もおさまり、大人しく、散りばめた花びらの如く可憐に雪が舞う。
風は相変わらず冷たいが、しっかりと防寒対策さえしていれば何て事の無い気温だ。
汚れを知らない純白の雪はふわりふわりと群れを成して地上に舞い降り、えぐれた大地を覆い隠していく。

何事も無かったかの様に、世界は白く色付いていく。

そしてまた、雪国は雪国となっていく。










何を消し去ったのか、何が埋もれていったのか、その痕跡も何も残らない白だけの世界は……何処か、物悲しい。



もうじき日も暮れるであろう、不気味な程静かな凍てついた針葉樹林の奥深く。

昼間の様な猛吹雪で彩られた酷く見え辛い視界では無く、今は空気が元々澄んでいる事もありクリアだ。

進む先、足元が見えるというのはこんなにも快適だったのか。
暗中模索ならぬ雪中模索をひたすら続ける必要も無く、顔に張り付く吹雪も今は無い。

雪の冷たさや柔らかさを感じ、神秘的な景色を見る余裕があるというのは嬉しい事である。
そんな軽い足取りで旅行感覚を味わいたいのは山々なのだが。













………如何せん、ここは慈悲もなければ容赦も無い、殺し屋達のテリトリーである。
彼等に見付かれば、また理不尽な追いかけっこが始まるのだ。
人並み外れた五感を持ち、狩りをするためだけに鍛えられた彼等を撒くのは、一苦労という言葉では足りないくらい苦労が大きい。