「―――極めて友好的な国交、と申しましたが………具体的な策をまだ何も言っておりません。………その内容こそが本題なのですが…………………………………バリアン王、如何なされた」
…早速話し始めたローアンは、何だかおかしい老王の様子を窺う。
………ピクリとも動かない身体。ただ、汗をかいた皺だらけの顔に収まる眼球だけは、忙しなく動いている。………ローアンをチラリとも見ようともしない。
それを見兼ねたのか、始終ニヤニヤと気持ちの悪い笑みを浮かべたケインツェルが、玉座の傍らから少し前に出て来た。
「フフフフフ!……申し訳御座いません………王は…聞こえてはいるのですが、しばらくは何もお答え出来ない様ですので、私が代わりに。………ああ、申し遅れました、側近のケインツェルと申します。フフフフフ!!」
………真後ろにいるアレクセイが微かに舌打ちをしたのが聞こえたが、ローアンは無視した。
「………致し方ない。ではケインツェル殿、代わりにお話を。………………以前、我が国から書状を送ったのですが………内容、御理解頂きましたでしょうか」
「ええ、勿論!………実にユニークな書状でしたねぇ!心踊りましたよ」
「………書かせたのが少々問題のある執務官でしたので…あの様な文面に。………不快にさせてしまったのでしたら、お詫び致します」
とんでもない!と、何だか嬉しそうにかぶりを振るケインツェル。
「………それで……………友好的な国交を築く、第一歩として……………提案が一つ…………少し大胆不敵な発言ですが、よろしいかな?」
………ケインツェルは答える代わりに、ニヤリと笑みを深めた。


