亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~


神官は小さく鼻で笑って、呟く様に言った。











「………………まだ、許していないのか?」






「―――…私がいつ許すと言った。………………許す気など…毛頭無い」

「…フッ……頑固者めが」

クツクツと喉の奥で笑い、神官は闇に向かって顔を上げた。相変わらず視界に映るのは闇ばかりだが、彼の目には、見えている。



その奥の。


厳かな空気と暗闇を纏う。







一人の、男の姿が。













「………何やら、急ぎの文の様だぞ。加えて、あの男からのものときているのだ。読むべきではないのか?」

「………」



うんともすんとも答えぬ声の主に、神官は今日何度目になるのか分からない溜め息を吐いた。遠い目で、何も無い天井を見上げる。

……この長老の頑固さは慣れているものの、長年付き合っている筈の自分は未だに対処出来ないでいる。
………人というものほど、難しいものはないと私は考える。


「………あれから何年経つのか。………十年…いや、十一年になるのか。………子供も大きくなっているのだろうな………最後に見た時は、まだ七つだったな…」




ザイロングとその子供は、今も健在なのだろうか。
十一年前のあの件以来、ザイロングは狩人の世界ではやけに有名な人物となってしまった。
彼は自責の念からか姿を見せなくなったが、それでも長老の怒りは未だ冷めぬ様だ。
歳月は何も解決してくれそうにない。


………子供の方はきっと……………何も、知らないのだろう。



「………仲直りしろとは言わぬ。だがな、こういう厄介事を私に押し付けるのは止めてくれ」