「………つい先日まで、とある依頼を受けていたのですが………偶然…彼に会いまして………。…その際に託された次第に、御座います」
そう言って、マナは再び頭を下げた。そんな彼女をじっと見下ろしながら神官は更に顔をしかめ、深い深い溜め息を吐いた。
血色の悪い骨と皮だけのか細い指が、白い顎髭を撫でる。
「……………………近頃出回っている…王族暗殺の依頼を受けたのはお前達親子だな?マナよ。……隠そうとしても無駄だ。私の目はすっかり老いているが、節穴ではないのだぞ…」
薄く開かれた瞼の内から、鋭い眼光がマナを射る。
全てを見透かす様な瞳は本人の言う通り…確かに節穴ではなさそうだ。
「………言われなくとも承知しております。確かに、私はその依頼を受けておりました。…途中、放棄致しましたが…」
「…ああ…なるほど。……………………そなたの運の悪いことに、王族の護衛についていたのがザイロングだった………というのがこの文に到る流れなのだな?」
「おっしゃる通りで御座います」
王族暗殺の依頼を受けていた件を暴くどころか、その王族の護衛をザイが受け持っている事まで見抜いた神官。
たった一つのキーワードから答えを導く洞察力は卓越したものだが………洞察したというよりも、神官はまるでマナとザイのやり取りを見ていたかの様に……サラサラと、答えた。
神官はまた一つ溜め息を吐き、頭痛がするのか、こめかみ辺りを軽く押さえた。
「………久しく名を聞いたかと思えば………相変わらず、面倒事しか起こさぬ男よ。………………マナ、御苦労であった。下がってよい……」
ヒラヒラと手を振り、マナに下がる様に促す神官。彼自身もその老体を起こし、暗い奥へと引っ込もうとした。
その向けられた背中に、マナはポツリと声をかけた。


