―――アイラ様。
―――………馬鹿な事はお止め下さい。
溜め息混じりの男の声が、椅子に腰掛けた直後、アイラの頭の中で響いた。
アイラは笑顔のまま、チラリと視線を真横に移す。
………呆れた顔のカイが、美しい模様が入った緑の瞳でこちらを見下ろしていた。
…クスリとアイラは笑い、カイに向かって頭の中で返事をした。
―――…馬鹿な事?…心外だな………場の空気を和ませてやったのに。
―――…あれではアイラ様個人の世間体が……。………嘘でもあんな異端の女などに声を掛けるなど………バリアンの恥です。
―――……きついね…カイ。でも、嘘でもとは………それも心外だな。
アイラは頬杖を突いて、正面に佇むフェンネル王に視線を戻した。
………熱風に靡く金髪の髪に、女にしては珍しい、兵士の様な意志の強い鋭い眼光。この国ではあまりお目にかかれない、透き通る様な白さの肌。華奢な体付きに、見た目とは裏腹の………何ともまあ、一刀両断に長けたきつい毒舌。
…見れば見る程美しく、気高い………高貴なる高嶺の花。
…異国の女。
やけに目立つ………目に入ってしまう彼女を凝視する目を細め、アイラは口元を歪ませた。
「―――………これでも、結構本気なんだよ。…………………………………………………………どうやったら………手に入るかな。なぁ?………カイ」
―――………。
やれやれ…と、カイは肩を竦めた。


