…アイラは、女好きだ。
だが、一国の女王にまで声を掛けるとは。
リイザや周りの慌て様など構わず、アイラは柔らかな金髪を指先でいじくり、花でも愛でるかの様にその香りを楽しんでいた。
「………太陽を思わせる黄金の髪に、透き通る空の青を帯びた瞳………それに日差しを物ともしない肌……………実に、お美しい。……言葉では言い表せません。………世の女性が羨む程だ……」
「………………御世辞が上手なことで…」
「世辞など………本心からの言葉です」
「では、世辞で出来た本心ではないでしょうか?」
……ローアンの微笑が心なしか……引きつっている。
それは本当に僅かな違いだが………使者達には分かっている様で、アレクセイなど半面アイラに憤慨しながらローアンにビクビクしている。
「………釣れない方だ。……………こんなにもお若いのに、女王として君臨されているとは………お独りで何かと辛いでしょうに。………ご結婚は考えられなかったのですか…?」
「…こう見えて未亡人ですの」
「………おや、そうでしたか。………貴女の隣りの、その隙間に………私が入る余地は御座いませんか?」
「……随分とまあ…直球ですね…」
「………こういう男は嫌いですか?」
「未知の生命体に思えてなりませんわ」
何だこの攻防。
バッサリと切り捨てられながらも、めげない………いや、それにさえ気付いていないかもしれないアイラは、爽やかな微笑で口説きに口説く。
ローアンは目に見えない茨でガードし、無数の棘でアイラを刺しまくる。
………この終わりの見えない攻防に、周りは唖然としたまま。
………遂には、弟のリイザが、尊敬する兄を止め始めた。


