美術品を鑑賞するかの様に、彼女の周りをゆっくりと回るアイラ。
前を向いたまま、ローアンは無言でそんなアイラを目で追っていた。
………上品な香水の香りが漂う。
「………」
ジロジロと舐める様に見てくる視線は………何だか気持ちの悪い…とにかく不快だった。
「………失礼。お幾つ、でしたか?」
「…………18……ですが」
…アイラの端麗な顔立ちが、正面を通り過ぎる。
老王はもはや何も言わず、息子の勝手な振る舞いをただただ見守っていた。
……真横から、低い透き通った声が囁かれた。
「………18…とは………お若い。………私と同じ歳だ…」
「………」
アイラの気配が背後に回り、視界から消えた。
………この男、人を珍品でも見る様な目で……。………一体何がしたいのか。
本の少し警戒しながらも、ローアンは微動だにしなかった。
………が……………………。
…………次の瞬間、ローアンは微かに眉をひそめた。
………金髪の垂れた後ろ髪を、他人の指先が掬いとり………撫で始めた。
………絹の如き光沢と柔らかさを確かめる様に。
「…………噂通り…………いや、それ以上に………………お美しい…」
………………。
…ローアンへのその囁きは、この静かな空間で響き渡るには充分で…。
………とにかく、老王を含め、周りは………アイラの発言に呆気にとられた。
「……………兄上…」
始終無言だったリイザが、呆れた様に苦笑を浮かべる。


