―――これは、まずい。
まず過ぎる。
使者達をとりあえず蹴散らして…友好的な関係など糞食らえだ、と反発するくらいで収めたかったのだが………。
………既に危険な…国際問題に発展している。……でかい火花が、両者の間で散ろうとスタンバイしている。
………戦争になろうが何だろうが…とは思っていたが…………いざこうなると…。
独り、滝の様な冷や汗をかく老王を見上げながら、ローアンは………………実に爽やかな笑みを浮かべた。
「………お気になさらずとも。………さすがは名高きバリアン王。私の部下は無礼にも貴殿の御指摘を中傷と受け止めてしまった様で………誠に申し訳御座いません。私には貴殿の真意が分かっております。………諫めて頂き、感謝致します」
そう言って、ローアンは………何ともポジティブな良い方に解釈し、上手く収めてしまった。
「………」
老王は瞬きを繰り返し、視線を外すと……にんまりと笑ったケインツェルと目が合った。
………この女の綺麗な笑顔は本当にそう思っているのか。それともやはり………演技か。
「分かっております。私はまだまだ、浅はかな王で御座います故」
付け足す様にローアンはボソリと言った。
…………後者か。
予想外の展開により場の空気が乱されてしまったが………ローアンを囲む空気は再び、物騒な気を帯びてきた。
何を考えているのか。この女王陛下は異国の地にいながら、剣も何も所持していない……殆ど丸腰の状態だった。
……殺そうと思えば、いつだって穴だらけにする事が出来る。
………無謀なのか…絶対的な自信の現れなのか。


