レトとユノはほぼ同じ位の背丈と体重であり、まだ幼いレトが人一人背負うのは苦難に思えるが、そこは狩人。
何食わぬ顔でユノを背負うや否や、人を抱えているとは思えない速さでその場から駆け出した。
勿論、弓を拾う事も忘れない。
針山のある方へ進路を定め、立ち並ぶ針葉樹林へと向かった。
何を言われたのか全く分かっていないアルバスは、去って行く主人をぼんやりと見詰めた後、一足遅れてスキップをしながら後を追って行った。
脱兎の如く、森の中へと走り去る白いマントの影を視界に捉え、ドールは小さく舌打ちした。
(………逃げられるっ……!)
せっかく空の魔石を使って標的の王族を瀕死の状態にまで弱らせ、あとはとどめの一発を放てば、全てが丸く収まる………という所まで来たというのに…。
こんな寒い雪山で何日も何日も憎いバリアン兵士と待機して、我慢して獲物を待ち受けていたというのに。
あと、もう少しだったのに。
………こんな苛立つのも、今までに無い程不愉快なのも、全部……全部…。
(この訳分からない女のせい…!!)
…とにかく全ての負の要素をローアンのせいにし、懇親の力を込めてドールは剣を振った。
…が、ドールの激情は届かぬ様で、ローアンは本の少し首を捻るだけで剣をサラリと避け、挙げ句の果てにはその細い指先で剣先を軽く弾いてきた。
………遊ばれている。絶対に。
本当は、こんな女を相手にしている場合では無いのに…。
「………っ…ハイネ!王族のガキを逃がすんじゃないわよ!!」
サラマンダーに乗ったハイネが上空にいる筈だ。


