亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~



レトとユノはほぼ同じ位の背丈と体重であり、まだ幼いレトが人一人背負うのは苦難に思えるが、そこは狩人。
何食わぬ顔でユノを背負うや否や、人を抱えているとは思えない速さでその場から駆け出した。

勿論、弓を拾う事も忘れない。



針山のある方へ進路を定め、立ち並ぶ針葉樹林へと向かった。






何を言われたのか全く分かっていないアルバスは、去って行く主人をぼんやりと見詰めた後、一足遅れてスキップをしながら後を追って行った。



















脱兎の如く、森の中へと走り去る白いマントの影を視界に捉え、ドールは小さく舌打ちした。

(………逃げられるっ……!)


せっかく空の魔石を使って標的の王族を瀕死の状態にまで弱らせ、あとはとどめの一発を放てば、全てが丸く収まる………という所まで来たというのに…。

こんな寒い雪山で何日も何日も憎いバリアン兵士と待機して、我慢して獲物を待ち受けていたというのに。






あと、もう少しだったのに。











………こんな苛立つのも、今までに無い程不愉快なのも、全部……全部…。






(この訳分からない女のせい…!!)


…とにかく全ての負の要素をローアンのせいにし、懇親の力を込めてドールは剣を振った。
…が、ドールの激情は届かぬ様で、ローアンは本の少し首を捻るだけで剣をサラリと避け、挙げ句の果てにはその細い指先で剣先を軽く弾いてきた。




………遊ばれている。絶対に。

本当は、こんな女を相手にしている場合では無いのに…。

「………っ…ハイネ!王族のガキを逃がすんじゃないわよ!!」

サラマンダーに乗ったハイネが上空にいる筈だ。