ここは、静か。
私以外、誰もいない。
何もいない。
あるのは空気と、静寂と、凍て付く寒さと、光と闇と………。
ここに居座る私だけ。
もうどれ位ここにいるのだろうか。
どれ位生きているのか。
指を折って数えても……指が足りない。
それ以前に、もう忘れてしまった。
朝も昼も夜も。
埃一つ無い冷たい床をヒタヒタと歩いて、ウロウロして、ちょっと座ってみたりして、腕を回してみたりして。
長過ぎる髪を指先で弄って。
天井から伸びている長過ぎる氷柱の先に舌を這わせて。
分厚い氷の窓から吹雪きを眺めて。
昔教えてもらった、懐かしい歌を口ずさんでみて。
する事なんて、何も無い。
暇だ。
暇過ぎる。
いたずらに時間を潰すのにも飽きてしまった。
限られた範囲を歩き回って結局辿り着くのは………。
あそこに見える……青い、冷たい………誰もいない玉座。
遠い昔は、あそこに誰かが腰掛けていた。
でも今はいない。
あれを見守るのも、今は私だけ。
眠い時や暇な時は、あの玉座に寄り掛かってぼうっとする。
神々しい玉座にこうやって触れて、寄り掛かって目を瞑るのは、私だけ。
軽い優越感。
でも、少し寂しい。
寂しい、寂しい、独りだけの優越感。
誰のものでもない、私だけの。
―――孤独の中の、優越感。