ドールの細い手は手袋の効果も虚しくすっかり冷えきり、完全にかじかんでいたが…だからどうした、とでも言うかの様に彼女の手は活発に動いた。
………マントの内から引っ込めた手の中には………布に包まれた、薄汚い………石。
黒ずんだそれをしっかりと握り締め、ドールはユノに向き直った。
………終わりに、させてやる。
次の手で………全部。
「………死にたくない…ですって………?」
ドールの視線の先には、卵の殻に似た何重もの氷の壁。
その中央に、中に………ぼんやりと見える少年の姿。
頭を抱え、俯いて、肩を震わせて。
………狂った様に、ヒステリックに、叫び続けている………幼い王子。
―――死んでしまえ。
―――皆死んでしまえ。
皆皆皆皆皆…。
「………………哀れな子…馬鹿な子………。………死ね…ですって?………死んでしまえ……ですって…?………………………違うわ…!!」
ドールは鋭い眼光でユノを睨み付け、巨大な鎚を構えた。
石を握る手が、寒さ故にか、怒り故にか………激しく震えていた。
「……………………死ぬのは……あんたよ。………あんたが死ねば、終わる。………あんただけが死ねば………全部終わるのだから…!!あんたが、死ねば………!!」
あたしは。
本当は…人殺しなんて嫌い。
争いなんて、大嫌い。
あんな哀れな子供を殺すなんて……本当は嫌よ。
でも。
長。
お父様。


