亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~



ドールの細い手は手袋の効果も虚しくすっかり冷えきり、完全にかじかんでいたが…だからどうした、とでも言うかの様に彼女の手は活発に動いた。



………マントの内から引っ込めた手の中には………布に包まれた、薄汚い………石。

黒ずんだそれをしっかりと握り締め、ドールはユノに向き直った。








………終わりに、させてやる。

次の手で………全部。







「………死にたくない…ですって………?」




ドールの視線の先には、卵の殻に似た何重もの氷の壁。

その中央に、中に………ぼんやりと見える少年の姿。
頭を抱え、俯いて、肩を震わせて。


………狂った様に、ヒステリックに、叫び続けている………幼い王子。



―――死んでしまえ。

―――皆死んでしまえ。

皆皆皆皆皆…。
















「………………哀れな子…馬鹿な子………。………死ね…ですって?………死んでしまえ……ですって…?………………………違うわ…!!」




ドールは鋭い眼光でユノを睨み付け、巨大な鎚を構えた。

石を握る手が、寒さ故にか、怒り故にか………激しく震えていた。







「……………………死ぬのは……あんたよ。………あんたが死ねば、終わる。………あんただけが死ねば………全部終わるのだから…!!あんたが、死ねば………!!」
































あたしは。





本当は…人殺しなんて嫌い。





争いなんて、大嫌い。















あんな哀れな子供を殺すなんて……本当は嫌よ。














でも。

長。


お父様。