振り返れば、そこには………胸を押さえ、木に寄り掛かりながら膝を突くサリッサがいた。
………視界も悪く、歩きにくい森の中を掻き分け、ユノを追いかけて来たらしい。
途中、雪に足を取られて転倒したのか、全身に真っ白な雪を被り、髪も乱れてしまっていた。
ザイはすぐに彼女の元に駆け寄り、上下する冷たい肩と背中に手を添えた。
「………すみ…ませんっ……私………あの子を、止められなくて………ごめんなさい……」
………こうなったのも、全て自分のせいだ…と泣き声を漏らすサリッサ。
震える足を酷使し、ザイに支えられながらその場で立ち上がった。
「………サリッサ殿……泣いている場合ではない。………王子は今、どうなっているのか……あれは………何なのですか…」
…以前にも、ユノの“白の魔術”を見たが………今目の前で起こっている現象はあの時とは比にならない程、巨大で、強力だ。
…氷の海を無限に生じさせ、気候までも操る力。………王だけが使える、魔術。…“白の魔術”。
………もしかしたら今目にしているこれは、まだまだ序の口なのかもしれない。
「…………いけない……あの子…完全に我を忘れている……!………このままでは………もっと酷い事に……!」
これ以上悪化する事態とは、一体どんな事態なのか。………とにかく、このまま放っておいても良い事なんて一つもありはしないだろう。
「………サリッサ殿は、ここにいて下され。………私が…なんとかして…」
魔術を止める術など知る由も無い。だが、何もせずに指を咥えて見ているだなんて事も、出来ない。


