「チチッ。チチチチチッチチチ―」
可愛らしい鳴き声は次々と吹雪きに揉み消され、跡形も無くなっていった。
そのクリクリした赤い瞳で周りを見回しても、レトの姿は何処にも無い。
………ただ、少し離れた所から、物凄い轟音が鳴り響いているのがきこえるだけ。
何度か首を傾げた後、アルバスは轟音のする方へヨチヨチ歩き始めた。
………レトの匂いがする。
レトを捜すべく、アルバスは積雪の上を何度も転びながら羽をばたつかせて進んだ。
定めた進路の途中を、凍て付いた岩が邪魔していた。
アルバスは大して無い跳躍力をフルに発揮し、岩を跳び越え様としたが………細い足はズルリと岩肌を滑り、アルバスはそのまま雪の上に落下し、コロコロと転がっていく。
再び雪に塗れてひっくり返ったアルバス。視界には吹雪が覆う薄暗い曇り空が広がっている。
丸っこい身体をなんとか起き上がらせ様とアルバスは羽をばたつかせた。
………その、直後。
………アルバスの視界が、ふと、影に覆われた。
ただでさえ薄暗いのに更に暗くなった視界。
そして身体に当たらなくなった吹雪。
羽の動きを止め、アルバスは真上から自分を覗き込む何かを、じっと見詰めた。
………目の前には、見た事の無いものがあった。
自分の周りにいた人間とは違う、また別の人間。
レトとは違う、別の、人間。
こちらを見詰めるその瞳をじっと見ながら、アルバスは首を傾げた。
「………チチッ」
時々雲の合間から見える、綺麗な青い空の色が、そこにはあった。


