亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~



目と鼻の先の空間に、取って張り付けた様にそこにある、浮かんだままの雪の群れ。


白い吹雪の時間だけが、止まっている。



一人のバリアン兵士と対峙していたザイも、静止する吹雪の中で辺りに目を凝らした。

………静かだ。



………風の音も、刃の鈍い音も、足音も、何も聞こえない。



辺りは静か。

ここは、静か。


不気味なくらい、静かで。



















「―――………ユノ…っ…?」
















彼の気配を、感じた。この限られた狭い世界の中で。

彼を。












ユノの気配がした方へと振り向けば………薄くなった蒸気に塗れる視線の先には、見慣れた彼の姿。


………そこにいるのは……以前、洞穴で見た時と同じ、彼の…。




赤い瞳の。








見慣れた、彼の。































「―――………僕のっ………邪魔をっ………………………っ…………………するんだあああああぁぁぁ―!!」
































―――パキッ。














氷がはぜる、甲高い音色。



一際大きなその音色が、ユノの内から響き渡った直後。


































大地は。






塔のごとき氷柱が群れ成す、氷の海と、なった。

















物凄い速さで、地面を這う様に迫り来る、氷の波。

まるでそれは生き物の様に、縦横無尽に駆け巡る。