亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~



白い蒸気と吹雪きに棚引く、絹の如き青い髪を、ハイネは見た。

まさかと思い、すぐさま踵を返してその小さな人影の前に回り込めば、相手は肩で息をしながら立ち止まった。

…対峙するその姿はどう見てもまだ子供で、狩人とは違う…もっと高貴な雰囲気を漂わせていて………ハイネは思わず、目を細めた。

「………当たり…だな…」


突然前を遮り、何か確信したかの様にニヤリとほくそ笑むハイネに、ユノは眉をひそめた。

…白いマントを羽織った、赤褐色の肌を持つ若い男。……敵か、と警戒しながら、ユノは一歩後退した。


「………………お前………王族だな…?………特徴が情報通りだ………」

「………」





……正体が…ばれている。

いや、正体など…遠い昔に既に知られていただろう。
今までこんな風に大掛かりな襲撃にあわなかった方が奇跡…いや……ザイのおかげか。



ユノは息を整え、じっとハイネを見据えながら口を開いた。



「………………いかにも。……僕がその王族………ユノマリアン=エス…だ…」

敵を前にしても臆する事無く、むしろ堂々とした振る舞いでユノは名乗った。
それに対し、ハイネは意地の悪い笑みを浮かべる。

「………余裕だな…雪国の王子様…」

「………その雪国に、わざわざようこそ……」


ご苦労様…と、嫌みを含めて言い返すユノだったが、後ろ手に組んだ小さな手は、恐怖で小刻みに震えていた。

………余裕?………余裕だなんて………そんなもの、ある訳が無いじゃないか。

………自分を殺そうとしている敵が、目の前にいるっていうのに。