(………骨折どころじゃ……すまないんだろうなぁ……)
痛い思いなら昔から散々しているが、やはり痛いのは嫌だ。
あの鎚からなるべく離れて、接近戦を避けたい。…だが、有利に思えた遠近戦は予想外の相性の問題がある。
………どういう戦略を以てして、挑むか。
「………君……バリアンの人間なの…?」
腰の鞘から剣を引き抜きながら、レトは言った。
…敵であるバリアンは、もっと強引で、問答無用で襲いかかってくる者達………と、勝手にイメージを膨らませていたのだが………まさか、こんな少女が。
………しかし、先程相手をした大柄な男と違い、この少女からは悍ましい殺気は感じられない。
何より、その鋭い眼光がものを言っていた。
………あれは、純粋な戦士と同じ……“義”というものを宿した目だ。
……信念を貫く、まっすぐな瞳だ。
………敵である事は確かだが………悪い人には見えない。むしろ良い娘だ。
何気無いレトの問いに、ドールは一瞬顔をしかめる。
「………バリアンはバリアンでも………馬鹿な老王様に仕える馬鹿な人間じゃなくてよ。………………バリアン兵士なんかと…一緒にしないでちょうだい……」
ドールはゆっくりと鎚を握り直し、身構えた。
…気の強そうな瞳に、闘志が宿る。
「………………この国の王族なんか……あたしには関係無いわ…………あたしは…ただ………」
………地面に横たわる鎚の先の、金属の塊が……圧縮された、見えない空気の層を纏った。
「………国潰しの前に…まず…………………あたしのお父様を………助けたいだけよ………」


