細身で華奢な手足だが、身体付きからして多分男だろう。先程交わした一瞬の会話では、声変わりはまだしていなかった。
………何よこいつ。
ガキのくせに…あたしより背が低いくせに……小柄な…くせに………なんか色白で…男のくせに可愛い声しちゃって………ああっ…!………余計な事で苛々してきたじゃないの!!
………別の意味で敵意をむき出しにするドール。
自分はちゃんとした乙女の筈なのに………相手のガキの方より逞しく思えてきた。この鎚のせいなのか。そうなのか。
………そんなドールの複雑な心境など露知らず、レトはその場から大きく後退し、彼女にすぐさま弓を構えた。
一瞬で現れた鋭い氷の矢を番え、重い弦を引き分け、少女に的を定めて離した。
青みがかった光線の如き矢は辺りの靄を払い除け、ドール目掛けて突き進む。
それと同時に、ドールは笑みを浮かべ、鎚を真横一文字に大きく振った。
「弓っていうのは、ワンパターンなのよ!」
ドールの声と共に、振り回された鎚は弧を描いて………真正面の何も無い空間を、叩いた。
鎚を中心に、見えない空気の振動が波紋の様に広がり……飛来してきたレトの矢は、ドールの目の前に辿り着く事なく、強力な空気圧によっていとも容易く弾かれた。
弾き返された矢は、細かな氷の結晶へと粉砕した。
「………」
………今、何が起きたのか………全く分からない。
………とにかく、この少女に対して弓は相性が悪い、という事は分かった。
彼女の鎚による空気の振動は凄まじいもので、辺りの靄が一変に吹き飛んでしまった。
………あれを、生身の人間が直接食らえばどうなるのだろう。


