レトは何処だ。何処にいる。
彼は大丈夫なのか。
何処にも、見えない。
何処にも、いない。
「………お母様っ………!下ろして!………下ろし…て!!」
激しい頭痛に苛まれる中、ユノはありったけの力を振り絞り、走るサリッサの腕から逃れた。
「ユノっ…!?」
地に下り立つや否や、ユノは母を無視して再び蒸気に塗れた世界に飛び込んだ。
そのまま真っ直ぐ突き進まず、回り込む様に進路を進めた。
…自分を呼ぶ、悲鳴にも似たサリッサの声は次第に遠ざかり、聞こえなくなった。
『狩人』という奴等は、野蛮で凶暴で命知らず。
大人数でたった一人を囲んだとしても、油断は禁物。
それなりの犠牲が出るのは覚悟しておく事。
………とにかく、危険な敵。
最も注意すべき相手である………ということは、分かっていたつもりだったが。
………何処かで自分は、己の力を過信していた様だ……と、ドールは思った。
「………ちょこまかと…!」
小さく舌打ちし、目の前にいる小さな狩人に向かって鎚を振るった。
ドールの攻撃はかなり素早い筈なのだが、目の前の敵は無言でヒラリヒラリと躱していく。
……いくら振っても、当たらない。…段々と苛立ってきた。
(………ガキ相手に…!)
そうだ……自分が相手をしているのは狩人といえども、ガキだ。
背丈はほぼ同じくらい。本の少しだけ、ドールの方が背が高いくらいだ。
深く被ったフードでその顔は分からないが、きっといけ好かない顔をしているに違いない。
剣やらナイフやらを大量に所持しているというのに、この身軽さは何なのだろうか。


