何処か空虚な殺意が、真後ろから伝わって来る。
剣に映る影は手元に握る、長い何かを自分目掛けて振り下ろしてきた。
…その動作は素早く、大振りな動きにしては無駄が無い。
咄嗟に避けようとしたが、思いの他……速い。
避けることは困難と見極めたレトは、素早く振り返り、振り下ろされる殺意を受け止めた。
(―――…っ…!?)
ズンッ…と、予想外の重さが剣に伝わってくる。受け止めた際の衝撃も凄まじく、危うくそのまま倒れるところだった。
………頭上で剣と交えている相手の武器は………剣なんてものじゃない。
鉄の……長い…。
ピキッ…と、受け止める己の剣が耐えられず、刃こぼれを起こした。
………本日二度目の押し合いだが、一度目よりも、こちらの方が……不利に思えた。
……至近距離にある靄で隠れた相手の顔が、微かに見える。
よく見れば、背丈は自分と同じくらい。その顔を、レトは真正面からじっと無表情で見詰める。
真っ白な蒸気の向こうに微かに見える敵の姿。
ギリギリ…と更に力を込めて押してくる敵は、レトを嘲笑うかの様に小さく口元を歪めた。
「―――………ごめんなさいね、坊や。………恨みは無いけど………死んでちょうだい…」
レトの剣を、巨大な鎚が押す。
この国では見慣れない、赤みがかった茶色い髪の少女が、不敵に笑う。
「………君………誰……?」
「……………誰でも良くってよ…」
…クスリ、と目を細めるや否や、少女は巨大な長い鎚を振るい、レトの剣を弾き飛ばした。
凄まじい衝撃だったのか、地に刺さった剣は真っ二つに折れていた。


