亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~



















………予想外にも…。






………背後で黙って控えていた使者達の中から、一人だけ。





……カツカツとブーツを鳴らして前に出て来た。


そしてそのまま、トゥラと二人の魔の者の間に回り込んだ。

……今にも魔術が発動して巻き込まれるやもしれない、という危険を無視し、トゥラを庇う様に突然出て来たこの使者。

…アレクセイは驚愕の表情を浮かべ、その背中を唖然と見詰めていた。













―――その直後。







………フッと………………魔方陣が、消えた。




魔力によりグルグルと渦巻いていた空気も止み、トゥラの足元からは一瞬で光が消え………杖の先の宝珠も、輝きを失った。






………魔術が、中断された…?


………有り得ない…!












「―――な………何じゃ!?………何が起こった!!……ログ、カイ!!………何故術を止めた!?………さっさと殺さぬか!!」


…老王と同様、現状が把握仕切れないのは二人の王子や側近も同じで……アイラとリイザは自分の腹心を怪訝な表情で窺った。


「―――カイ、どうした…?」

正面で背を向けて立つ腹心のカイを、アイラは覗き見た。







………元々真っ白な肌のカイの表情は………青白く、何故か酷く辛そうで………強張っていた。


それはログも同じの様で………二人揃って固まったまま、小刻みに震え、辛そうに呼吸を繰り返していた。




………美しい緑の瞳は、天敵を前にした小動物の様に、怯えきっている。




………たった使者一人が…………前に出て来た、だけで。











「………何が起こったのじゃ!!」