それは、生まれてこの方…見た事の無い光景だった。
鮮血とは違う、茜色を帯びた真っ赤な光の筋。
それは吹雪を押し退け、凄まじい熱気を放ちながら真っ直ぐ………地に、落ちてきた。
―――…火柱、だった。
見た事の無い、炎の塊。
全てを燃やし尽くす勢いで火柱はあっという間に頭上にまで迫ってきた。
「………っ…」
レトはその場から素早く跳び退き、クルクルと宙で回転してザイ達のいる場とは反対側に着地した。
…その直後。
極寒の寒空の下では決して有り得ない、“暑い”という感覚が全身に染み渡った。
レト達が今の今まで立っていた場所に、火柱は勢いよく落下した。半径十メートルの範囲内に、凄まじい熱気と、湿気などという存在しがたい空気が漂う。
火柱によって大量の雪が急激に溶かされたためか、辺りは真っ白な蒸気に包まれた。
ただでさえ猛吹雪で見えない視界が、更に悪くなる。
…向かい側にいる筈のザイ達の姿も、いつの間にか視界から消えていた。
…上空を見上げれば、そこには頭上を悠々と漂う鳥の影。
………真っ赤な羽毛に包まれた、見た事の無い姿の鳥だった。
赤い鳥は旋回しながら、勝ち誇った様に仕切りに甲高い鳴き声を上げている。
……冷たい風に乗って流れる蒸気にむせ返りながら、レトはフードを深く被ってマフラーで口元を覆い、忙しなく周囲を見回した。
………鉄の臭いがする。
使い古された、金属の…。
―――…これは、罠だ。
「―――…父さん…!!」
濃い真っ白な靄の中を真っ直ぐ突き進むべく、レトは走った。


