だいぶ離れていてあの高さなのだ。………目の前まで行けば、さぞや天を貫く程高いだろう。
もしかしたら天辺は雲の上まで突き出ているのかもしれない。
………登ったら、雲の上が見えるかな?………父さんの言っていた通り、雲に乗ったら星が取れるかもしれない……。
………雲の上では星が取れるんだ…という、非現実的且つ可愛らしいザイのデマを本当に信じているレトは本の少し目を輝かせて空を見上げた。
どうやって登ればいいのだろう。
やはりナイフを使って地道に登り詰めて行くしかないか。
……首をもたげる子供心に独りわくわくしていたレト。
雲の上もやっぱり寒いのかな。
そう思い、レトは何気無く真上に視線を移した。
この三日間、いつ見ても全く変わらぬ昼間の薄暗い空。
途切れる事を知らない吹雪に塗れた空には、何一つ、無い。
広い空を霞めるものは、何も無い。
…筈、だった。
………不意に。
薄暗い真っ白なレトの視界の隅から………。
小さな影が、音も無く………通り過ぎて行った。
(―――…?)
本の、一瞬だった。小さな影は猛吹雪の向こうを物凄い速さで飛来し、視界から消えた。
「―――父さん」
半ば反射的に、レトは父を呼んだ。
そして同じ様に、ザイもすぐさまこちらに振り返った。
父の手はいつの間にやら、マントの内で剣の柄を握っている。
「…どうした」


