亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~

普通の人間ではない。魔力という不可思議な…ある意味どんな武器よりも優れた………最強の生きた武器。

……その戦い方に関しては、こちらは何一つ知らない。






…相手が相手なだけに、アレクセイは警戒心を強めるものの、どう出ればいいのか分からない。


………しかし、トゥラの敵意は治まるどころか、魔の者が出て来ると同時にそれは増した。

「―――…グルルルルル………」

「………トゥラ、止めなさい………死にに行きたいのですか……」




………どうすればいいのか分からず、答えの出ぬ内に、少し震えた老王の声が響き渡った。

「………殺れ!!あの犬を業火で焼き払い、粉にしてしまえ!!」

老王がそう叫んだ途端、二人の魔の者は揃って長い杖を天高く振り上げた。




―――ボウッ…と、杖の先端に埋め込まれた緑の宝珠が怪しげな光を宿す。


フードの下にある美しい緑の瞳が、一瞬光った。








「―――っ……!」

トゥラの足元に、見たことの無い複雑な魔方陣が二つ…重なって浮かび上がった。

丸い円を描いた陣の中に、古代文字が物凄い速さで一文字一文字…つらつらと並んでいく。

「―――トゥラ…!」

アレクセイはその魔方陣からトゥラを押し出そうとした。


完成間近の魔方陣が、より強い光を放った。
………赤い…鮮血に似た濃い色の炎が一瞬トゥラを囲んだ。






―――燃やされる。






















どうする事も出来ないアレクセイは、魔力の源である魔の者二人に向き直った。

………マントの内に隠れた剣の柄を握り締める。
………魔術を止めるしか………。











謁見の間に火柱があがるか、老人が切り込んで来るが早いか………どちらが先かという緊迫した中で……。