亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~


狩人内での噂では、針山地帯は樹々も何も無い岩窟だらけの場所で、鍾乳洞の上下を逆様にした様な世界が広がっているらしい。

所々ある横穴の岩窟からは冷たい風が吹き渡り、寝泊まりには便利だそうが………奥へは入るな、と警告されている。


何故?……という疑問の答えは、誰も答えてはくれない。正確に言えば、岩窟の奥がどうなっているかなど誰も知らないのだ。

もう何十年も、誰も踏み入った事の無い世界。








「………………戦士の月が…出る…までに………ちゃんと………着くの…かな」

果てしない道程。

…そんな、雪の嵐にかき消されてしまいそうな弱々しい言葉が、レトの頭上から聞こえてきた。


………ふと見上げれば、母の背中に苦しげな顔を埋めるユノ。
…普段元気で弱音を吐かない彼の口から出た言葉だとは思えなかった。


日数が縮まれば縮まる程、ユノの不安は増している様だった。同時に言い様の無い恐怖と、緊張と、焦りが……彼を襲う。

………彼にしか分からない、彼だけの感覚。


そんな彼に、自分はこれといって何もしてあげる事が出来ない。

彼の様に博識な頭も持っていないし、高い身分でもない。
生きている事自体に大きな意味がある彼は、きっと計り知れない重みを抱えているのだろう。



………彼の不安が無くなるのは、いつなのだろう。

本当の意味で解放されるのは、一体いつなのだろう。















「………大丈夫だよ…。……まだ日はあるよ…」

もっとマシな言葉は出ないものだろうか。

…かける言葉が、他に見つからない。