最後に父と手を繋いだり、おんぶをしてもらったのはいつだったか。
あまりにも遠い昔の事で、正直、記憶は曖昧だった。
………うんと小さい頃。父と狩りの練習をしていて、森の中に入ってしばらくしてから、うっかり父とはぐれてしまって…。
………誰も、何もいない場所で、切り株の影に座り込んでわんわん泣いて。
飽きる程泣いて。
嫌だの何だの…父さん、父さん、父さん…と喚きながら泣いて。
馬鹿みたいに泣き散らしていると、呆れ顔の父が何処からか現れて………幼い自分は一目散に父の元に走って行った。
ぐずぐずといつまでも泣いている自分を見下ろして、父は…。
そうだ、その時確か………冷えきった自分の手を、大きくて暖かい父の手が………包んでくれたのだ。
帰るぞ…と言って苦笑していた父の顔は、涙でよく見えなかったせいか、あまり思い出せないが。
………あの時の優しい温もりは、今でも鮮明に覚えている。
………いつからだったか。
(………父さんが側にいないと………不安で…仕方無く…なったのは……)
………忘れてしまった。
「………もうすぐ、森の真ん中辺りだ。……まだ、だいぶかかるが………この森を抜ければ、針山地帯に出る。………そこを越えれば………………『禁断の地』だ………」
吹雪きの中。ザイが指差す真北の方角は、真っ白で何も見えない。
………しかし、確かに『禁断の地』はその先にあるのだ。
このデイファレトの、最北の地に。
孤城が、眠っているのだ。


