亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~




最後に父と手を繋いだり、おんぶをしてもらったのはいつだったか。

あまりにも遠い昔の事で、正直、記憶は曖昧だった。





………うんと小さい頃。父と狩りの練習をしていて、森の中に入ってしばらくしてから、うっかり父とはぐれてしまって…。








………誰も、何もいない場所で、切り株の影に座り込んでわんわん泣いて。


飽きる程泣いて。


嫌だの何だの…父さん、父さん、父さん…と喚きながら泣いて。





馬鹿みたいに泣き散らしていると、呆れ顔の父が何処からか現れて………幼い自分は一目散に父の元に走って行った。

ぐずぐずといつまでも泣いている自分を見下ろして、父は…。





そうだ、その時確か………冷えきった自分の手を、大きくて暖かい父の手が………包んでくれたのだ。

帰るぞ…と言って苦笑していた父の顔は、涙でよく見えなかったせいか、あまり思い出せないが。

………あの時の優しい温もりは、今でも鮮明に覚えている。









………いつからだったか。












(………父さんが側にいないと………不安で…仕方無く…なったのは……)














………忘れてしまった。














「………もうすぐ、森の真ん中辺りだ。……まだ、だいぶかかるが………この森を抜ければ、針山地帯に出る。………そこを越えれば………………『禁断の地』だ………」


吹雪きの中。ザイが指差す真北の方角は、真っ白で何も見えない。

………しかし、確かに『禁断の地』はその先にあるのだ。


このデイファレトの、最北の地に。



孤城が、眠っているのだ。