「………………寒い…」
レトのすぐ後ろを歩くユノは、いつもの元気は何処へやら……今にも倒れてしまいそうなおぼつかない足取りで雪路をただひたすら進んでいた。
どんなに厚着をしていても寒さを防ぎきれない、この極寒の恐るべき威力。
意地でも身体を動かさなければ、下手すれば凍傷になりかねない。
少しでも血の巡りを良くしなければ、自滅してしまうのだ。
何のために歩いているかなど当の昔に忘れ、半分意識が飛んだ状態でただ黙々と歩き続けるユノ。
それを見兼ねたレトが振り返り、力の無い彼の手を握った。
「………大丈夫…?」
「………大丈夫…と言いたいところだけど………頭…ガンガンするし……クラクラしてきた」
………苦笑さえも上手く作れないユノの顔は、酷く青ざめていた。
ユノからすれば、この旅は初めての旅。
貴族社会では縁もゆかりも無い…未だかつて経験した事の無い苦境だ。
そんな酷な旅に出る事を、逆らい様の無い神様から命じられてしまった、まだまだ幼い王子様。
………狩人さえも避ける未踏の地を目指して此所まで来た彼とその信念には、今更ながら驚かされる。
「………頑張って…」
気休めにもならないかもしれないが、とにかくレトは彼を励まし、その手を引いて行く。
………足元では相変わらず鼻歌を歌うアルバスが、吹雪きなどものともせずにスキップしていた。そこはさすが、カーネリアン。雛でもやはり、寒さには滅法強い。
ふらつくユノは、その雛鳥を何度も踏みそうになった。
「………」
半ばレトに引っ張られた状態。
…俯いたまま、静かに瞬きを繰り返していたユノは………次第に意識が遠のくのを感じていた。


