口を開けば我先にと雪が飛び込んでくるし、顔を上げれば豪雨の如く、容赦無く細雪が皮膚を撫でていく。
しかし、それでもその無表情を崩さないレトは、ある意味さすがと言うか。
その前を歩くザイもこの少年の親だけあって、無愛想な顔は崩れる気配など無い。
「………愚痴をこぼしても何の得にもならんぞ、レト」
「………うん…」
…それもそうだ、と納得するレトは、固く口を閉ざした。
こうやって少年は、更に寡黙になっていく。
………息子がこんなにも珍しくげんなりとしているのも、無理は無いとザイは思った。
確かに。
………この吹雪は異常だ。
時間が経つにつれ肥大し、強力になっていく悪天候。
気温も三日前に比べて随分と下がっていた。
…まるで、自分達を『禁断の地』に近付けさせない様にしているかの様な、そんな見えない悪意さえ感じられる。
…この猛吹雪の元凶として第一に考えられるのは…やはり……。
(………嵐…か……?)
偶発的に出現する吹雪きの爆弾…嵐は、近頃では幾つも現れており、その発生率はっきり言って、偶発的に…などというレベルではない。
稀に三、四つの嵐が同時に現れる事もあるが、その数が多ければ多い程、天候は悪化する。
………もしかしたら、近くに嵐が群れを成しているのかもしれない。
…そんな幾つもの嵐が爆発すれば、大地を削る爆風と全てを凍て付かせる冷風が縦横無尽に吹き荒れる。
ならば上空を警戒せねばならないところだが………天はどこまで人を困らせるのが好きなのか、見上げた先の上空は、足元の積雪と変わらぬ程真っ白な雪で塗りつぶされ、嵐の姿など見える筈が無かった。


