亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~



「………このっ…!」

胴体目掛けて飛んできた氷の矢。
止まる事を知らないそれは吹雪きを掻き分けて突き進んできた。

額の第三の目で矢の位置、速度諸々を一瞬で見定め、リストは空中で身体を捻り、それらを紙一重で避けた。


イブもそれら全てをヒラリと躱していく。その内一本が長いポニーテールを掠め、数本の髪がはらりと舞い散り、イブは忌々しそうに舌打ちした。




二人はそれぞれ別の木の天辺に下り立ったが、地上では剣を構えた狩人達が素早い身のこなしで二本の大木の下に駆け寄り、自分より一回りも二回りも太い幹に向かって一閃を放った。





………瞬間、幹に横一直線の線が走り、大木はいとも容易くぐらりと大きく傾いた。

「………っ…なんつー馬鹿力だ…!」

「自然破壊反対―!!」

倒れゆく大木から別の木々へと跳び移れば、下り立ったその大木は同様に切り倒され、二人の足場はすぐに不安定になる。



………何がなんでも地上に引き摺り落としたいらしい。


森林伐採をしてでも。



「………谷っ!!もう一回、谷!!リスト!谷に突っ込むわよ!!」

この森の真ん中には、巨大な谷が横断している。『禁断の地』に行くならば、必ず越えねばならない谷。

神声塔の横を走っていた谷とは、比べ物にならないほどこちらは馬鹿デカい。
おまけに深いし暗いし寒い。



………狩人から逃げるには、やはり谷に飛び込む事が一番良い様だ。
今回も前回同様、谷に飛び降りて“闇溶け”で逃げる事を決意し、イブは叫んだ。

………案の定、“闇溶け”が出来ないため“闇入り”を嫌々ながらされたリストは、イブの提案に物凄く嫌そうな顔を向けてきた。