亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~


「陛下達は多分反対の南東側から向かっている筈だ。距離もそんなに遠くはない。………で、問題は何処から針山に入って城に行くか。………この針山、絶対バリアン兵がうじゃうじゃ潜伏してるぜ…」

避けられるものならばなるべく避けて行きたい。
極秘で潜入しているフェンネルの存在がばれてはまずい。
………もっとも、既にあちらはご存じかもしれないが………王様自らが潜入しているとは、さすがに思うまい。


「………まともな情報も無しに何の準備もしないでお城に突っ込むのって、とーっても危ないと思いま―す。ていうか、イブちゃん嫌でーす…」

至極嫌そうに顔をしかめるイブに舌打ちをするリストだったが…確かに…。
認めたくないが、彼女の言う通り、このまま真っ直ぐ針山の群衆を突っ切って城に向かうのは危険だ。

『禁断の地』……正体不明の化け物が住む城の事など、何一つ知らぬままだ。





…背後から凄まじい悲鳴が聞こえた。
バリアン兵士の一人が上空に投げ出され、的と化した彼に数え切れない程の矢が身体中を貫いた。

吹雪きの中で真っ赤な血飛沫が舞い、血の雨ならぬ、血の雪の赤い霙がぼたぼたと散乱した。



………地図が汚れないようにしながら、二人は真後ろの激戦を無視する。

「………………あんたが前言ってたあれは?………昔お城仕えしてたっていう医者。……岩山の麓の街に健在中じゃなかったっけ―?」

「………ああ。………ここから少し離れた所だ。………下弦の月までもう時間が無いと思って…訪ねるのは止めようと思っていたが……」




その街までは、約半日かかる。
それに麓の街だから、バリアン兵士に押さえられているやもしれない。