フローラ。
フローラ。
私のフローラ。
私の、花。
私と陛下の後ろを、まるで子猫の様についてくる。
可愛いフローラ。
私が一番好きなのは勿論、陛下ただ一人ですが。
フローラだけは、特別。
初めての、二番目に好きなもの。
………しかし、陛下もあの子も、もういない。
私の好きなものは、もう何処にも無い。
何にも無い。
何も。
…振り返れば、いつだって………頑張って…車椅子でついてくるあの人の姿はもう…。
「………私の思い出の中でしか、見せてくれないのですね。………………皆……………………皆………」
―――……意地悪なことだ。
誰も私を、呼んでくれない。
これからも、ずっと。
「おさらい…といこうか」
黄ばみに黄ばみ、蜘蛛の巣よりも細かなしわが寄り、所々擦り切れた虫食いだらけの古い地図。
被さる細かな雪を振り払いながら、風に揺れる地図の端を押さえ付け、二人で見下ろした。
夜明け前。
辺りはまだ暗く闇に覆われた中、純白の猛吹雪が縦横無尽に駆け巡り、甲高い声で轟々と歌っていた。
明かりなど無い、こんな暗い夜空の下で、地図など見える筈も無いのだが、彼等二人の白く濁った瞳はその不可能を可能にする。
「………暖炉の側でおさらいしたかったな―…」
「………状況が状況だから…仕方無えだろ…」
地図を見る様促すリストに対し、吹雪の中で真っ白な溜め息を吐くイブ。
二人はこんな気候の悪い中で、半ば無理矢理現在地の確認をしていた。


