見回せば、高い天井のそこら中に生えている氷柱の群れ。
使われなくなってどれくらいになるか分からない、豪勢だが古いシャンデリアからぶら下がった長い長い氷柱の先端を折った。
ひんやりと冷たい透き通ったそれをぼんやりと眺め、食に飢えている訳では無かったが、その氷柱を意味も無くガリガリと囓った。
何十年も昔に食べた美味のシャーベットと比べ、こちらは鮮度は申し分無いが、残念な事に味が無い。
全て噛み砕いて食べた後、自分以外の気配など全く無い、空虚な謁見の間をぶらぶらと歩き回った。
…多分、五メートル以上はあるであろう恐ろしく長い緑の髪をズルズルと引き摺りながら、凍て付いた扉を開け放ち、謁見の間から出て行った。
無駄に長い、凍て付いた廊下を裸足でペタペタと闊歩しながら、伸ばした手で天井から生える氷柱の先端に触れていく。
刺青だらけの真っ白な手に触れられた氷柱は、淡い緑色の光を灯し、薄暗い廊下を照らしていった。
自分の単調な足音しか聞こえない、自分以外何も無い廊下の真ん中を口笛を吹きながら歩いていると…。
………窓も扉も開いていない、勿論穴なんてものも空いていない筈なのに、背後から冷たい柔らかな風が吹き込み、すぐ脇を通り過ぎていった。
真っ白な濃霧の塊が、長い髪を撫でていく。
消え失せる事の無い不可思議な濃霧は、自分の隣りに並んで浮かんでいた。
………長い廊下一面を埋め尽くす程長いその姿は、まるで白い大蛇。
…隣りに並んでついてくる濃霧の塊にちらりと見やり、にんまりと笑みを浮かべた。
「………どうしたんですか?今は冬眠の時期でしょう?………寝るのに飽いた?」


