老王の喚き声はアレクセイの声をもかき消し、謁見の間に響き渡った。
「――わしは認めぬぞ!……わしは、バリアンの王ぞ!王家代々の血を引く王ぞ!!」
老王は衰えた両足で地団駄を踏み、勢いよく玉座から立ち上がった。
既に無言でただただ老王を見上げる使者一行に向かって、ビュッと杖の先を向け………忌々しいとでも言うかの様なぎょろついた目をカッと見開いた。
「―――…薄汚れた歴史を持つ小娘じゃ!………愚行を働いた王族の末裔…………………………………死に損ないの王め!!」
―――…それは
―――少々……
「―――聞き捨てなりませんな…」
…ゾッとする様な、恐ろしい…眼光。
そんなアレクセイの口から、しわがれた低い声が漏れた途端……………皺だらけの彼の手が、マントの内側に引っ込んだ。
………刃が、柄から抜ける音が、くぐもって聞こえた。
「―――アレクセイ様!!」
背後から、数人の使者が驚いて声を上げる。
……が、アレクセイは構えを解かない。
………老王を中心とした視界の隅で、アイラが笑みを浮かべた。
………ここで刃を向ければ、ここへ来た事も、老王に謁見したのも………全てが…水の泡。
それは分かっている。分かっている。
………しかし。
………あまりにも…これは……言葉は…。
(―――………何も知らない奴が………勝手な事を………!!)
アレクセイは一歩、踏み込んだ。


