亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~



老王の喚き声はアレクセイの声をもかき消し、謁見の間に響き渡った。


「――わしは認めぬぞ!……わしは、バリアンの王ぞ!王家代々の血を引く王ぞ!!」


老王は衰えた両足で地団駄を踏み、勢いよく玉座から立ち上がった。
既に無言でただただ老王を見上げる使者一行に向かって、ビュッと杖の先を向け………忌々しいとでも言うかの様なぎょろついた目をカッと見開いた。





















「―――…薄汚れた歴史を持つ小娘じゃ!………愚行を働いた王族の末裔…………………………………死に損ないの王め!!」




















―――…それは




―――少々……





















「―――聞き捨てなりませんな…」





















…ゾッとする様な、恐ろしい…眼光。
そんなアレクセイの口から、しわがれた低い声が漏れた途端……………皺だらけの彼の手が、マントの内側に引っ込んだ。




………刃が、柄から抜ける音が、くぐもって聞こえた。

「―――アレクセイ様!!」

背後から、数人の使者が驚いて声を上げる。
……が、アレクセイは構えを解かない。







………老王を中心とした視界の隅で、アイラが笑みを浮かべた。







………ここで刃を向ければ、ここへ来た事も、老王に謁見したのも………全てが…水の泡。

それは分かっている。分かっている。



………しかし。









………あまりにも…これは……言葉は…。








(―――………何も知らない奴が………勝手な事を………!!)


アレクセイは一歩、踏み込んだ。