亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~






「………」















背中にもたれ掛かってくる小さな重み。

そっと振り返れば………寝癖だらけの髪に埋もれた、幼い寝顔がそこにはあった。


剣を胸に抱いてマントにくるまった小さな身体は、完全に自分に全てを預けている。

…しばらく眺めた後、本の少し身体をずらして、膝枕をしてやった。
ちょっとした物音や揺れだけで、この子はすぐさま覚醒するのだが……余程、疲れていたのだろうか。今は完全に爆睡している様だった。









……静かな寝息と共に上下する縮こまった身体。
自分とは似ても似つかない、その綺麗な髪を優しく撫でながら………ザイは独り、微笑を浮かべた。









………随分と古い記憶が、よみがえったものだ。

……この子が…まだ三つの時だったか。
………思えばあの時から…。




(………私がいなくなると……すぐに泣いてしまう様になったな…)

………この子がこういう人間になってしまったのは、やはり全て自分のせいか。
決して気弱な子ではないのだが………独り…という事が、何よりも怖いらしい。


………人見知りであるくせに、異常なまでに寂しがり屋なのだ。

そういうところは、自分にも、母親にも似ていない。
………この子の母親は…それはそれはもう………………はっきり言って、お転婆な娘だった。
ユノ王子といい勝負だったかもしれない。






「…………………アシュ…。………こんなに大きくなったぞ………お前の…レトは………………もう、11だ…」

………外で轟々と唸る吹雪の音に、いとも容易く掻き消されていくザイの声。

誰の耳に届く訳でも無く、言葉は綴られていく。