「……ルウナ様、あまりルアで乗馬してはいけませんよ。………その内過労死であの聖獣、死ぬからね」
無表情でダリルは言いながら、広間の隅に目をやる。
……柱の後ろ。薄暗がりの向こうに、もう駄目だ…と四肢を投げ、息も絶え絶えで横たわるルアがちらりと見えた。
………乗り捨てられた馬みたいだ。
「リルリル、うるっさい!ねぇリルリル、あしょぼーよ。あしょぼ―?暇なんでしょ―」
「お客さんと相手しているこれの何処が、暇そうに見えるんですか」
今度はダリルに遊ぼうとせがむルウナ。だが、使者のマントは仕切りに引っ張ったままで、離す気配はない。
………正直な話、子供に免疫が無い使者達。無垢な幼児の扱いなど、勿論知る由も無い。追っ払えばいいだけの話なのだが、子供といえども王子様。………この国で一番偉い子供であり、王が不在の今、この城内で一番偉いのも、この子供だ。
……そのためか、ルウナが再びくるりとこちらを見上げてきた途端、全員がビクリと震えた。
「ねぇねぇ、おままごとしよ―!!」
―――………へっ?
ままごとに誘われたのが自分等だと分かるや否や、使者達は互いに顔を見合い、うろたえた。
「…お―ま―ま―ご―と―。ねぇねぇやろうよ―。アレアレとすると、アレアレ泣いちゃうから、もうアレアレとするの飽きた―!」
………変な時に変な事をさり気なく暴露するルウナ。
ダリルはゆっくりとアレクセイに視線を移し、「………あんた、泣いてるの?ふーん……」とでも言うかの様に微笑を浮かべた。
………当の本人は笑顔で窓の外を眺めていた。


