………バリアンの使者達が主導権を握っていたこの場の空気が、一気に崩壊していく。
代わりに何故か、小春日和ののほほんとした生温い空気にガラッと入れ替わった。
………予想外の不意打ちに狼狽する使者は、足元で自分のマントの裾をグイグイ引っ張る小さな人影を無言で見下ろした。
「ねぇねぇ!きたないって何ぃ?きたないって、ばっちぃって事でしょ―?でも僕の国きたなくにゃいよ―?お山とかお花畑とか―、しゅっごく綺麗なんだよ―!ゴミとかはね―、ルウナ、ちゃんと拾ってるからいっつも綺麗なんだよ―!しゅごいでしょ―!!ねぇねぇ、ねぇねぇ。だから『きたない』って何ぃ―?ねぇねぇ―!」
………グイグイ、としつこくマントを引っ張りながら、『きたない』の意味を教えてと目を輝かせてせがむ………幼児。
茶色がかった短い金髪の、とびっきりの笑顔を添えた可愛らしい男の子が………ピョンピョン跳んでる。
………あまりにも無邪気な、赤と琥珀色の異なるオッドアイが……眩しい。
使者達は全員、硬直した。
「………………な………何故子供が…!」
どこから湧いて出て来たのか知らないが、急に現れた幼児に戸惑いを隠せない。
わたわたとしつつどうする事も出来ない彼等に、アレクセイはにっこりと微笑んだ。
「………控えなさい。………我がフェンネル王54世の第一王子にあらせられる、ルウナ=ヴァルネーゼ様に御座います。………無礼の無い様…」
「………お…王子…!?」
……あの小娘、未亡人とは言っていたが…子供がいたのか。


